理論物理学の限界とロボトミーとまちカドかぞく(6月第4週)

6月第4週読んだ本、アニメとか

書籍(2冊)

数学に魅せられて、科学を見失う - 物理学と「美しさ」の罠 4点
精神を切る手術 脳に分け入る科学の歴史 3点

アニメ(34話)

まちカドかぞく 5点
まちカドかぞく2丁目(10話まで)
宝石の国 4点

映画(1本)

TENET 3点

語りたいコンテンツ

数学に魅せられて、科学を見失う - 物理学と「美しさ」の罠


理論物理学を研究してきた著者が、その研究対象としてきた理論物理学が袋小路に嵌っているという事を指摘した本。
近年理論物理学が要求する実験のレベルは現在の科学技術では困難なほど高まっており、その為理論の構築に実験による検証データを用いることができない。では物理屋は何を頼りとするかというと、その理論の"自然さ"を経験や主観に基づいて判断するようになってしまう。
それだけなら、各々が自分独自の美的信念で研究をするならまだギリギリいいのだけど、"自然さ"という概念が社会的な側面も持っているからたくさんの研究者が一つの理論(具体的には超弦理論)に向かって行ってしまうし、超弦理論以外の研究が軽視されてしまうという事が深刻な問題として挙げているみたい。そうした内集団バイアスを自覚しましょうみたいな話は割とどこでもある話だけど人類最高峰の知的集団でも避けられないのかって思ったりした。

正直学術的にどうこうというよりはちょっとリアルな映画でも見るか~みたいな感覚で読んでたけどかなり面白い本だった。満足。

精神を切る手術 脳に分け入る科学の歴史


精神外科の歴史と現状を概観して脳に分け入る科学について考察した本。
この本自体の感想は特にないんだけど、薬によるメンタルコントロールロボトミー的な物理的な脳の介入って何が違うんだろう?ってのは気になったかも。

精神不調の時の解決策の一つって酒を飲んだり向精神薬を飲んだりすることで、自分自身はそのことに強い違和感は感じないんだけど、

メンタルピンチ!メンタルピンチ!モノアミン系神経伝達物質発射!!!ドババババババ~

みたいな世界観は割とディストピア寄りだって理解できる。
この違いって何なんだろうな、そう思ったときに酒を飲むのとロボトミーで神経切断することの区別もつかなくなってきた。脳を物質的に還元しすぎると良くないみたいな話なんだろうか?

まちカドかぞく 1期、2期(10話まで)

ここ一週間の生きがい。

偉い人が言っていたらしい"大きな物語の喪失"という言葉の意味が今までよく分からなかったが、まちカドまぞくの喪失を前にするとよくわかる。お願いだから一生続いてくれ。

まちカドかぞく展も行ってきました

6月第3週読んだ本、アニメとか

今週の雑感とインプットとか

割と普段通り過ごしてるつもりが文字起こししてみると結構少なかった。
『文学者と哲学者と聖者 吉満義彦コレクション』という本を精読しているのと、TOPANGA CHAMPIONSHIPに時間をかなり吸われた為という説が濃厚。

ときど vs ふ~ど 良すぎたね...

書籍

ポストモダンの思想的根拠 9・11と管理社会 :4点

アニメ

かくしごと :4点

語りたいコンテンツ

ポストモダンの思想的根拠


めちゃめちゃよかった!
著者は題名のポストモダンという語に対して"差異のポストモダン"と"管理のポストモダン"の二通りの意味を与えており、1970年代から流行した"差異のポストモダン"から2001年9月11日を契機とした"管理のポストモダン"への変遷、その流れにおいて台頭した自由管理社会について論じている。

自由管理社会とはオーウェルやハックスリーが予言したような専制的統制管理社会のイメージとは全く異なり、人々の欲望に寛容な態度をとった上で管理するような社会であり、なぜ自由を求めたはずの人々が管理を要請しこのような社会を形成するに至ったのかについての説明は本当に分かり易く、また重要だと思われる情報の割にはこれについて論じてる本は少ないのも相まってかなりコスパのいい本だとは思う。

ただ、前半や中盤で展開されている論にはかなりの魅力があったものの、後半になるにつれ徐々に尻すぼみになっていく感は否めない。
自由管理社会の成立過程やその社会の中で如何にして私たちは権力に対して対抗すれば良いのか?権力に対してどんなに抵抗しても、結局は権力の枠内でしょ?という問いに対して回答がどっちつかずで消極的にならざる負えないわけだ。
まあそれでも、私も(そして恐らくこの本の多くの読者も)その回答に期待するほど理想家ではないのでこの本の高評価に変わりはない。

かくしごと


面白かった!
1~11話までは日常モノっぽい印象を受けるアニメだが、その中でも途中途中"ああ、終盤になんか大きいのあるんだろうな"みたいな空気を上手く出してていい。ジェットコースターをカタカタ上っている感ある。最後の急降下地点での物語の没入体験もめちゃめちゃよかったのでかなり満足。

クリエイターにとって自らの不死性を担保するのは自らが生み出すコンテンツに他ならないが、主人公にとってはそのオルタナティブとして娘である姫の存在がある。
父親が漫画よりも自分の方を大切にしていると悟った姫は主人公に対して"あなたが描いている漫画はもう終わったよ"と告げることができる。
そして父親である主人公は自らが描いていた漫画の終了の悲しみを乗り越え、娘の成長に対して感動する。物語として素直に美しい。拍手。

全体的にハッピーエンドで終わった感のある話だけど、主人公の妻への死別に対して心理的解決がなされてない気がするのだけが唯一の気がかりかも。

6月第2週の読んだ本、アニメとか

書籍 3冊

神学の思考 :4点
神学の技法 :4点
あなたは今、この文章を読んでいる :3点

アニメ 24話

六花の勇者 :4点
SSSS.GRIDMAN :3点

映画 1本

行き止まりの世界に生まれて

語りたいコンテンツ

神学の思考、神学の技法

今週最も消化コストが高かった本。内容が特別難しい訳ではなく、読み進めること自体は簡単だったのだが自分の中に別概念を導入する作業だったので心的なコストが割と重かった。
神学はここ三年くらい触れてもいいかな~と思ってた分野だったのだが、なんだかんだめんどくさくてきちんと触れては来なかった。ところがここ最近人文系書籍を読むことが多く、それに伴って自分がいかに自然主義的な世界観に生きていたかが鮮明になってしまったので、神学を始めとする神秘思想を勉強することの優先度が急上昇したという経緯がある。

自分はここ最近まで外側にある認知領域を認めない世界観で生きてきたので、認知領域を認め世界が拡張された際の思考の鋳型を知りたかった。

この目的に対してこの本はかなり的確に答えてくれて、日本語向けの入門書としてはかなり当たりだった。
特に三一論に対してのカトリック正教会プロテスタントの考え方の違いとそれに伴う世界観の変化などはガチで需要ドストレートだったので運いい~~!って感じで結構楽しく読めた。

プロテスタント神学の基礎の基礎は大体つかめたので、この分野の関連として次に読む本の択としては

  • キリスト教が現実社会にどうコミットしているのかをより鮮明に知りたい

→ふしぎなキリスト教

  • キリスト教神秘主義をインストールした際に個人の実存としてどのような生き方になるのかをより鮮明に知りたい

→文学者と哲学者と聖者 吉満義彦コレクション

→現代人のためのイスラーム入門 

  • もっとガチガチ体系的に神学を知りたい

→教会教義学、キリスト教神学入門

みたいな感じになると思う。気が向いたら読むことにする。

SSSS.GRIDMAN


前半は本当に好きで食い入るように見てたけど後半になって相当萎えた。

この作品の十割は新条アカネがどのように扱われるかにかかっていた。
日常に対する不満や鬱憤に怪獣という虚構世界に没入し、その世界で満足してたし完結してたのが僕の新条アカネ像で、僕の理解では新条アカネは決して悩む存在でもなければ救われる対象でもなかった。
自分が楽しみにしていたのはGRIDMANサイドがどのようにして新条アカネを排斥するかとか、新条アカネがどのようにしてGRIDMANを排斥するか、そのような世界の奪い合いを楽しみにしていた。”目を覚ませ僕らの世界が何者かに侵略されてるぞ!”という言葉は主人公サイドとアカネサイドの両方から理解できる言葉だったし、製作サイドもこのことを共有していたのかと感じていた。新条アカネというスキゾフレニアの動向をどこか自分と重ねて視聴していたんだと思う。スキゾの為のアニメなのだと本気で思っていた。

ただ、物語が進むにつれ新条アカネは全く持ってスキゾでもなければパラノでもなかった事が判明した。新条アカネはどうやら日常的で現実的な幸福を望んでいて、なんかよくわからないけどグリッドマン光線で心変わりしたのちに現実世界へと帰還していってしまった。
いや、それができたら新条アカネじゃなああああああああああああああい!!

のたうちまわり発狂死した21歳男性の死体がそこにあった。
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